新品ではないものを扱う場合に許可を得る必要があることが大半だろう。中でも、専ら生産業者、再生登録業者、古物商、金属くず商が有名であるが、これらの違いを十分に理解していない人も多いことだろう。
自分がおこなおうとしている業が、どれに該当するか判断しかねている人もいるのではないだろうか。そこで、制度の趣旨や成立背景、行政やそれぞれの特徴から違いを比較していく。
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制度趣旨・目的の違い
専ら再生業者、再生登録業者、古物商、金属くず商は、制度の趣旨・制度の目的から大きくふたつに分類ができる。
専ら再生業者、再生登録業者
これらは、廃棄物の適切な処理・再生を目的とする法令規則上の概念・名称である。専ら再生業者、再生登録業者どちらとも、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が根拠法である。
古物商、金属くず商
盗品の換金を防ぎ、窃盗被害者の回復を目的とする法令規則上の概念・名称である。古物商は古物営業法で対応され、金属くず商は地方自治体の個別条例で対応される。
それぞれの概念・名称ができた時代背景
専ら再生業者、再生登録業者、古物商、金属くず商は、その概念や名称ができた時期や背景に違いがある。
専ら再生業者、再生登録業者
廃棄物の処理に関する戦後の流れに注目していこう。第二次世界大戦終戦直後は焼却処理もなく、ゴミの河川投棄・路上投棄がおこなわれ、手押し車や小型の船で運ばれていた。ゴミの排出ルールが未整備であったためゴミが飛散し、汚染物質が広がり、伝染病の蔓延等公衆衛生上の問題になっていた。
高度成長期の始まる1954年に清掃法を制定し、公衆衛生上の理由から行政と住民両方にゴミ処理の義務を課し始めた。当時は環境汚染などは考慮されていなかった。高度成長期では公害(水俣病・イタイイタイ病)が問題になり、深刻な環境汚染が表面化する。公衆衛生上の必要性に加え、環境保全の必要性も出てきた。
1970年国会(通称公害国会)にて、清掃法を抜本的に改正し、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が制定された。翌年環境庁が発足し、それ以降、日本各地のごみ処理場の整備などが進む。バブル景気の大量消費により、従来よりも廃棄物問題が一層深刻化した1990年には、香川県豊島事件が摘発され、大量の有害物質を含んだ産業廃棄物不法投棄が表沙汰になり、従来の廃棄物処理法の限界が明らかになった。
また廃棄したゴミによるダイオキシン汚染問題も明らかになった。この時期特にゴミ最終処分場の不足が現実的になり、その対策として循環型社会の形成するべく方針転換がおこなわれている。
平成3年(1991年)、深刻な不法投棄やゴミ最終処分場の不足を対策すべく、抜本的な廃棄物処理法改正がなされた。同時に資源有効利用促進法も制定され、廃棄物の品目に合った各種リサイクル法ができる。これらの歴史を深く突き詰めるのであれば、以下のようなサイトが参考となる。
環境省.“日本の廃棄物処理の歴史と現状”.環境省.2014-02.:専ら再生業者、再生登録業者の歴史的背景に関する参考文献例1
環境省.“廃棄物処理及び清掃に関する法律の主な改正経緯”.環境省.2016-05-19.:専ら再生業者、再生登録業者の歴史的背景に関する参考文献例2
古物商、金属くず商
古物商や金属くず商は、窃盗犯の換金を防ぐ歴史的な流れが見られる。明治時代から戦前までは古物取締法が存在し、それにより骨董品売買市場や中古品売買市場での、盗品の換金を防いでいた。戦後、昭和24年(1949年)改正されて古物営業法が制定される。
高度経済成長期を迎え、日本の生活水準が上がり産業構造が変化し、価値の高い金属くずが大量に取引されるようになった。金属は加工などでリサイクルがが可能であり、重要な資源でもある。
価値の高い金属くずの窃盗と換金を防ぐために、この金属くずを売買したり交換したりする古物商に対し、金属くず商許可をさらに求めるようになった。これらの歴史を深く突き詰めるのであれば、以下のようなサイトが参考となる。
南都中央綜合事務所.“金属くず商・金属くず行商とは”.南都中央綜合事務所.更新日不明.:古物商、金属くず商の歴史的背景に関する参考文献例
管轄の行政機関の違い
法や規則の制度趣旨によって管轄の行政機関が変わる。専ら再生業者、再生登録業者、古物商、金属くず商も管轄に違いがある。
専ら再生業者、再生登録業者
廃棄物の適切な処分・再生を目的とするため、再生登録業者・専ら再生事業者の管轄は、地方自治体の環境衛生局である。制度上、再生登録業者は都道府県が窓口になっている。
専ら再生事業者に関する相談窓口は、廃棄物全般の相談窓口でおこなう。一般廃棄物であれば市区町村の環境衛生部署で相談する。産業廃棄物については都道府県・政令指定都市に相談する。
古物商、金属くず商
盗品の換金を防ぎ、窃盗被害者の回復を目的とするため、古物商・金属くず商許可の管轄は、各都道府県の公安委員会である。申請窓口は、警察署の生活安全課や防犯課である。
それぞれの具体的な説明
これまで、制度趣旨や目的、制度が作られた歴史的背景、行政機関から違いを比較してきた。これまで、専ら再生業者と再生登録業者、古物商と金属くず商という区分けで解説してきたが、ここでは、それぞれのそれぞれの具体的な事項について確認していきたい。
専ら再生業者
1970年の廃棄物処理法制定以前から、専ら物(古紙・くず鉄・空き瓶・古繊維)においては、処分ルートができており、再生利用されてきた。すでに適切に再生利用されている点を考え、収集運搬や処分に関する事前届出やマニフェストは不要だと判断し、廃棄物処理法の規制を緩和した。例外規定としてできた名称が専ら再生業者である。
しかし近年、多種多様な材質を組み合わせた不要品が増え、古紙・くず鉄・空き瓶・古繊維でも専ら物とみなされない不要品が出てきている。例えば、プラスチック製品が付着しているものなどである。自治体により判断が変わってくるため、窓口で相談することが必要である。
専ら物は、廃棄の許可とマニフェストが不要であるため、専ら物を拡大解釈されると廃棄物処理制度が骨抜きになるリスクがある。拡大解釈していないかチェックが必要である。
環境省.“廃棄物処理業の許可制度について”.環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部.2014-10-24.:専ら生産業者に関する参考文献例1
環境省.“廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)”.環境省.2029-04-18.:専ら生産業者に関する参考文献例2
東京都リサイクル事業協会広報委員会.“コンプライアンス(法令遵守)研究集会(報告)廃棄物処理法「専ら物」規定の誤解や拡大解釈をしないために”.2015-03-31.:専ら生産業者に関する参考文献例3
再生登録業者
再生登録業者は、平成3年(1991年)の廃棄物処理法の大改正の際に追加された制度である。廃棄物処理法第20条の2が、この再生登録業者に関する法律である。あくまでも任意登録であって義務ではない点が特徴である。
また、名称独占(廃棄物処理法第20条の2第3項)であり、登録したものだけが登録廃棄物再生事業者という名称を使用することができる。自治体や年度によっては、登録することにより減税が受けられることもある。
しかし、一般廃棄物処理業・産業廃棄物処理業の許可とは別制度であるため、再生登録業者となっても別に一般廃棄物処理業・産業廃棄物処理業の許可が必要である。登録申請は、都道府県の環境衛生局である。
CSR・環境戦略お役立ちサイト おしえて!アミタさん.“専ら再生業者、生産登録業者、古物商、金属くず商の違い(後編)”.長岡文明.2015-06-09.:再生登録業者に関する参考文献例1
廃棄物処理コンサルティング小野寺事務所.“再生事業者登録とは”.行政書士法人小野寺事務所.2018-12-21.:再生登録業者に関する参考文献例2
古物商
古物営業法に規定される古物を、事業として売買・交換・レンタル・リースする法人・個人のことを古物商としている。廃棄物処理とは制度趣旨・目的が違うため、対象とする物品が限定されている。
ゴミ処理や環境保全のためではなく、あくまでも窃盗の対象になる持ち運び可能な動産が対象である。具体的には、美術品類・衣服・時計宝飾品類・自動車・自動二輪車原付自転車・写真機類・事務機器類・機械工具類(ゲーム機含む)・道具類(ゲームソフト含む)・革ゴム製品(カバン・靴など)・書籍・金券類である。
窃盗の対象になりにくい巨大なものや、運搬にコストがかかるものは古物営業法上の古物としては見做されない。例えば、大型船舶や航空機、金属原材料などである。
e-Goc.「古物営業法」e-Goc.2018-04-25:古物商に関する参考文献例
金属くず商
高度経済成長期以降、急激に増えた金属くずを、売買・交換・レンタル・リースする場合には、古物商免許だけではなく金属くず商免許が必要である。具体的には、鉄や銅のスクラップ、コンプレッサ、エナメル線、銅銭、電線、コイル、金属パイプ、コイン、アルミサッシ、ステンレスのタンク、使用済み配管、給湯器、ラジエーターなどである。
しかし、全ての自治体が金属くず商許可や届出を必須としているわけではないので、自治体に問い合わせることが必要である。金属くず商許可が必要な道府県は、北海道、茨城県、長野県、静岡県、福井県、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、岡山県、広島県、島根県、山口県、徳島県と、どちらかというと西日本が多い傾向がある。
今後の条例改正次第では、今まで許可が不要だった地方自治体でも許可が必要になったり、逆に必要だった地方自治体で許可が不要になる可能性もある。そのため、自治体に問い合わせをしておくことをおすすめする。
サポート行政書士法人.“金属くず商許可”.サポート行政書士.2017-08-04.:金属くず商に関する参考文献例1
大阪府警察.“大阪府金属くず営業条例”.大阪府警察.2014-03-27.:金属くず商に関する参考文献例2
長野県警察.“金属くず商許可申請の手続き”.長野県警察.2019-02-11.:金属くず商に関する参考文献例3
まとめ
主に、専ら再生業者と再生登録業者、古物商と金属くず商で制度の趣旨や制度が設立された背景、管轄の行政機関などが異なっている。さらに細かく見ていくと、専ら再生業者は廃棄物処理法の例外規定としてできた名称であり、古紙、くず鉄(古銅などを含む)、あきびん類、古繊維の4品目に限定して許可なしで営業できる者を指す。再生登録業者は廃棄物処理法の大改正の際に追加された制度であり、再生登録業者への登録は任意となっている。
古物商は、古物を、業として売買・交換・レンタル・リースするものを指すが、金属くず商については、金属くずを、売買・交換・レンタル・リースする者を指す。地域によっては古物商許可のみで金属くずを扱うことができるが、各都道府県によっては別に許可が必要になるのである。これらを整理し、自分がおこなおうとしている業で必要となる許可を判断して申請をおこなっていくと良いだろう。
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