世界中で様々な企業が、様々な製品を制作しているが、人気があるのは、世界中に知られている知名度の高い企業が制作した製品である場合が多い。
特に、ファッションの分野はその傾向が顕著で、高級品を制作するブランドの製品、いわゆるブランド品が、高額にもかかわらず人気が高く、世界中の国々で愛されている、と言っても過言ではないだろう。
そんな人気の高いブランド品であるが、偽物である偽ブランド品が、市場で流通することもある。高価で人気が高いブランド品の偽物を安価で制作すれば、通常の製品より多くの利益を得ることが出来るからである。
偽ブランド品は、製品自体がどんなによくできていても、ブランド品の偽物である限り、製品としての価値は限りなく低く、質屋やブランド品買取ショップなどで買取を依頼しても、偽ブランド品と判明した時点で、買取を断られてしまうほどである。
一口に偽ブランド品といっても、すぐに偽物とばれてしまうような粗雑な物から、本物とそっくりの精巧な物まで様々なものがあり、特に精巧な偽ブランド品は、一般の人間には、本物との区別は、ほとんど不可能なレベルのものもある。
そこは、質屋やブランド品買取ショップでも同様であるが、それらの店舗には、ブランド品の真贋の判定を行うブランド品鑑定士を配置する場合が多く、買取の段階で偽ブランド品を排除して、偽ブランド品の流通を防ぐのである。
さらに、偽ブランド品を市場から排除することを目的とした団体もいくつか設立されている。一般社団法人の日本流通自主管理協会もその一つで、並行輸入市場から偽ブランド品を排除すべく活動を行っている。
その日本流通自主管理協会が認定し、ブランド品鑑定士が取得する資格が、「協会基準判定士」とよばれるものである。
今回は、協会基準判定士について記載する。
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日本流通自主管理協会とは
日本流通自主管理協会(The Association Against Counterfeit Product Distribution:略称AACD)は、1998年4月に設立された一般社団法人である。
設立の目的は、並行輸入品市場において、“偽造品”や“不正商品”などいわゆる偽ブランド品の流通を防止することである。
並行輸入品市場において偽ブランド品の流通を防止することで、並行輸入するブランド品の信頼性を確保し、それにより公正な並行輸入品市場の形成と市場の拡大と、さらには、ブランド品を購入する一般消費者を保護することになるためである。
日本流通自主管理協会は、ブランド品の鑑定時に使用する、各ブランド向けの「協会基準マニュアル」の作成や、ブランド品を購入する、もしくはブランド品を購入した一般消費者からの相談への回答、偽ブランド品の関するトラブルの調停、問題のあるウェブサイトの情報の公開、一般向けのセミナーの開催などを行っている。
協会基準判定士とは
そして、日本流通自主管理協会が実施している重要な活動の1つとして、協会基準判定士の育成がある。
協会基準判定士とは、日本流通自主管理協会が認定しているブランド品鑑定士の資格である。
日本流通自主管理協会は、前述のように偽ブランド品の流通の防止を目的として設立された団体だが、その一環として、並行輸入品の手続きや各種法令、ブランド品の真贋を判定するといった内容の講習や試験などを行っており、この試験に合格した人に与えられるのが、「協会基準判定士」という資格である。
協会基準判定士を取得するメリットは
実は、ブランド品鑑定士には、ブランド品鑑定士になるための必要な資格などは存在しない。例えば、国家資格の不動産鑑定士は、まず国家試験を受験し、合格したら数か月から1年もかかる実務修習を行い、その後行われる修了考査に合格して初めて不動産鑑定士として活動することができるが、ブランド品鑑定士には、そのような試験も実務研修も必要ないのである。
極端なことをいえば、質屋やブランド品買取ショップに就職して、ブランド品鑑定士と名乗れば、ブランド品鑑定士になることができるのである。
もちろん、質屋やブランド品買取ショップは、未経験者をすぐに買取の現場に立たせることはせず、ブランド品の知識やブランド品鑑定に関する研修などを行い、場合によっては社内試験を行って合格したものをブランド品鑑定士として買取の現場に就かせる場合が、ほとんどである。
そのため、実際に質屋やブランド買取ショップで対応するブランド品鑑定士の技術は、ほとんどの場合、問題ないものと考えられる。
ただ、並行輸入品を購入したりブランド品の買取を依頼したりする側としては、ブランド品鑑定士の技術を外から見ることは出来ず、そのショップで購入することやブランド品鑑定士に買取を依頼することが問題ないかを判断はつかない場合が多いだろう。
その場合でも、ブランド品買取ショップが「協会基準判定士」が在籍して対応していることを公表すれば、購入者や依頼者側からは、一定水準以上のブランド品鑑定士がいる、という判断材料になるかもしれない。
実際、日本流通自主管理協会の会員企業で、協会基準判定士が在籍しているブランドショップの中には、協会基準判定士が在籍していることを、信頼の証として、ホームページに公表している場合もある。
ブランド品判定士が協会基準判定士の資格を取得する事は、ブランド品鑑定士として一定水準以上の技術をもっていることを証明するだけでなく、在籍しているショップの信頼の証となる、というメリットがあるといえる。
協会基準判定士になるには
ブランド品鑑定士の資格である協会基準判定士を取得するには、2つの条件がある。
まず、1つ目の条件として、日本流通自主管理協会の会員企業に属していること。
日本流通自主管理協会は、専門店や質屋ブランド品買取ショップなどの「小売会員」、バッグやアクセサリーなどの専門知識を持つ「卸売会員」、さらに日本流通自主管理協会の目的に賛同し協力する「賛助会員」の3つの会員企業から成り立っている。
つまり、協会基準判定士になるには、3つの会員企業のいずれかの社員であることが必要であり、一般人や非会員企業の社員は、協会基準判定士にはなれないのである。
これは、協会基準判定士がブランド品の判定時に使用する、日本流通自主管理協会が作成した「協会基準マニュアル」が会員企業しか使用できないなど、いくつか理由があるためと思われる。
2つ目として、日本流通自主管理協会が開催する講習に参加して、講習修了後に行われる試験に合格すること。
講習は、並行輸入品の手続き方法から各種法令、カスタマー対応、さらにブランド品の判定まで、5回にわたって半年もの間続き、その講習を受講した後に実施する試験に合格することで、協会基準判定士の資格を取得することができる。
扱う内容が広範囲に渡っており、覚えることも多いことから、試験の合格率はかなり低いようで、協会基準判定士は民間資格の中でも比較的難しい資格となっているようだ。
以上の2つの条件をクリアすることで、協会基準判定士になることができる
まとめ
協会基準判定士について記載したが、協会基準判定士は、ブランド品鑑定士が取得できる資格として、ブランド品鑑定士の技術を確認する指標の1つとみることができるかもしれない。
ただ、協会基準判定士は、日本流通自主管理協会の会員企業に属している人のみが取得できる資格、という制約があるため、協会基準判定士を取得していない(取得できない)協会基準判定士の非会員企業に属する人でも、ブランド品鑑定士として信頼できる人は、大勢いると考えられる。
もちろん、協会基準判定士の資格をもっていることは、ブランド品鑑定士として信頼できるといえるが、ブランド品の買取などを依頼する場合でも、協会基準判定士の資格を持っているブランド品鑑定士に、必ずしもこだわらなくてもいいかもしれない。