なんでも鑑定団では個人が持っている茶碗や掛け軸、おもちゃなどのさまざまな骨董品をプロの鑑定士が査定してくれる番組だ。家宝とされていたものが実は数千円程度のものだったり、蔵の奥から見つかった古そうなものが実は数百万円のものだったということもある。ただ、鑑定士によって高額とされたのに偽物と疑われているものもあるので知っておこう。
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事件の概要
なんでも鑑定団には業界でもよく知られているプロの鑑定家がたくさん集まっていて、ほぼあらゆる種類の骨董品の査定ができる体制を整えている。実際には一種類の骨董品に対して本当にプロなのは一人だけということが多く、他の鑑定士はアドバイザー的に意見を述べる程度のことも少なくはない。
ただ、業界で一流の人がいくらの価値があるものかを一つ一つ丁寧に決めていくため、その結果に対して視聴者が疑惑を抱くようなことはほとんどないのがなんでも鑑定団の特徴である。しかし、ある茶碗の鑑定が依頼されたときに事件は起こってしまった。番組では曜変天目茶碗として非常に貴重なものだと認めたにもかかわらず、偽物ではないかという話題が浮上したのだ。
2,500万円という査定価格が付いた
この事件の概要をまずは確認しておこう。なんでも鑑定団に依頼されたのは黒い茶碗で、どのくらいの価値があるものかをプロたちが必死に鑑定をした。その結果としてなんと2,500万円という番組中でもトップクラスの査定価格が付いたのである。
その鑑定家の話によると、無傷の姿のものについて言えば世界には三点しか現存していなかった曜変天目茶碗だというのだ。番組自体はそれで終了に向かったが、終わった後に事件は起こった。
レプリカだと中国人から連絡があった
なんでも鑑定団で曜変天目茶碗だと鑑定した茶碗が、実は私が焼いたものだと言う中国人から連絡があったのである。この連絡をした中国の陶芸家の話では日本円に換算すると1,400円ほどの価格で売っていたもので、曜変天目茶碗のレプリカのようなものだと言っているのだ。茶碗の底に銘を打ってあり、それが自分が使っているものと同じだからということを根拠としている。
曜変天目の技術は現代で再現するのが難しく、いかにして再現するかに一生をかけているような陶芸家も国内外に大勢いるのが実態だ。その人たちからも疑問の声が上がっていたということもわかり、番組始まって以来の失態という批判の声すら上がるようになっていた。
番組側としては鑑定士のことを守るスタンスを持っていて、番組として決定して発表したことなので特にそれ以上のコメントはできないというスタンスを取り続けている。しかし、プロ集団による鑑定だったにも関わらず、偽物かもしれないという疑惑を残すような終わり方をしてしまっているのは多くの人の疑念をさらに強める結果になったのが現状だ。
その後の展開
このような偽物を本物として鑑定したのではないかという疑惑が広まった影響を受けて、番組が終了してからもこの茶碗が本当に曜変天目なのかを判断したいという声が上がっている。その取り組みも実際におこなわれてきているので、番組終了後の展開についても知っておこう。なんでも鑑定団に依頼した茶碗の所有者としても本物か偽物かわからないままにはしたくないという気持ちがあり、他のプロに相談を持ちかけたのである。
相談を受けて科学的な手法により分析をしたのが奈良大学の教授である。この茶碗が偽物だ、レプリカだと騒いでいる人たちはテレビを通してしか見ていないのに本物であることを否定し続けていることに疑念を持ち、現代科学の力を持って偽物論が嘘だということを示そうとしたのだ。
奈良大学では蛍光X線分析をおこなうことにより、茶碗に用いられている釉薬が偽物論を展開している人たちの言っているものかを判断しようと試みたのが特徴と言える。結果としてはそのような釉薬を使っていることはない実験結果が得られたと発表している。ただ、これによって曜変天目茶碗だということが示されたわけではなく、偽物という説の一つを否定できたに過ぎない。
しかし、この実験結果についてもさらに論争を呼んでいるのが実態だ。偽物説で取り上げられていた釉薬を使っていないことを証明するためにはコバルト、クロム、セレン、カドミウムという四種類の発色物質が使われていないことを示す必要がある。
しかし、奈良大学で使われていた分析機器では、クロムの含有量については正確な数値を出せないものだったという批判もあるのだ。結局は本物か偽物かという点だけでなく、偽物説の真偽についてもまだ明確にはなっていない。このようになんでも鑑定団の鑑定結果を火種にして大きな論争が展開されているのである。
この事件から学べること
なんでも鑑定団は人気の高い番組で、その中で疑惑が残るような鑑定結果を出してしまったことは世の中に大きな衝撃を与えた。これから骨董品を売りたいと思っている人は、この事件からできるだけ多くのことを学んでおいた方が良い。
プロでも本物か偽物かを見極めるのは難しい
無数の骨董品の鑑定をして、番組中で査定価格を発表し、視聴者を納得させ続けてきたなんでも鑑定団の鑑定家たちも真贋の見極めに失敗してしまった可能性が示唆されているというのが一つ目のポイントだ。どれだけ目が肥えているプロであっても本物か偽物かを見極めるのはとても難しいことであり、ときにはミスをしてしまう可能性があるということは留意しておかなければならない。
信頼できる鑑定家がいる業者に骨董品を見てもらって、本物かどうかを判断してもらおうと思うこともあるだろう。業界でよく知られている鑑定家であったとしても、その真贋の見極めを誤ってしまうこともあり得るのだ。本物と言われたけれど実は偽物だったという可能性もある。一方で、偽物だからと安値で買い叩かれてしまった骨董品が実は本物だったということもないわけではないと考える必要があるのだ。
分析機器が正しいとは限らない
一方、鑑定や査定をする上では科学技術を使えば良いのではないかと考える人も増えている。古い絵画が本物かレプリカかを判断するために曜変天目茶碗のときと同じように蛍光X線分析などの光学的な手法を使って判断することも多くなった。しかし、高度な分析機器を使って本物かどうかを判断しようとしても、そもそも分析機器の選び方が誤っていたり、機器は誤っていなくても測定方法が間違っていたりすれば正しく判断することはできない。
専門家でないと正しい使い方もわからないため、不正をすることもできるだろう。また、うっかりミスをしてしまったために測定結果が変わってしまい、本物が偽物とされてしまう可能性も否定はできないのだ。このように熟練のプロが見ても、科学技術を使っても真贋を見極めるのは極めて難しいことなのである。
価格を付けるのはさらに難しい
真贋がわかったとしても、それにどれだけの価格を付けるのかはさらに難しいのは明らかだろう。なぜこの茶碗は3,000万円ではなく2,500万円なのかと言われたときにこの500万円の違いを説明できるかと言われたときに、鑑定士は明確に答えられるだろうか。
偽物だとわかったとしても、茶碗を見ただけで1,400円が適正だと判断するのも難しいのは明白だ。このように査定価格を出すとなるとさらに困難が生じるということは理解しておくべき点である。
貴重な骨董品はどうやって売るべきか
なんでも鑑定団の関わった事件を念頭に置いてみると、貴重な骨董品を売りたいと思ったときにはどうしたら良いのだろうか。安易に近くにある買取業者に依頼して査定をしてもらい、言われた通りの価格で売ってしまうのは損になる可能性があるというのはわかるだろう。価値があるかどうかを判断できる人にまずは鑑定してもらうのが大切だ。
骨董品には鑑定書付のものもあるが、業界で知られている有名機関が認めたものということで売るときには本物と認めてもらえるようになるメリットがある。もちろん、この事件の経緯を考えればその鑑定が実は間違っていたという可能性も否定できないが、高く売れるようにするという意味では十分に役に立つものだ。
専門機関に問い合わせる
鑑定書が付いていない骨董品を持っている場合には、専門機関に問い合わせて鑑定をしてもらうこともできる。ただ、一般的にはかなりの費用がかかることに加え、期間も数週間程度は必要としてしまうことになる。費用的にも期間的にもあまり好ましいこととは言えないのは確かなので、本当に必要なときには利用を検討するというスタンスが妥当だ。
買取業者に査定をしてもらう
一方、プロすらも判断ミスをしてしまうことがあるということは逆手に取ることも可能である。もし自分が持っている骨董品が本物かレプリカかがわからないのなら、本物かもしれなという気持ちを持って買取業者に査定をしてもらえば良い。ある業者に依頼したら偽物として扱われたけれど、別の業者ではこれは本物で希少価値があるという査定をしてくれるといった可能性もあるからだ。
このときにどちらが正しいことを言っているのかはわからないだろう。しかし、それでも本物だと言って買い取ってくれる業者に売ってしまえば問題はない。査定価格はその業者が責任を持って決めたものなので、売買契約をしてしまったらそれまでなのである。
ただし、本物だということで高い値段で買い取ってもらったときに、取引が取り消しになることもあるので注意しよう。売るときにこれは絶対に本物だからとアピールしていた場合に、実は偽物だったのが後になってわかった場合には、虚偽の内容があったという指摘を受けて取引をキャンセルされてしまうこともある。
本物と認めてくれれば高く売れると思って、あの手この手で業者を騙そうとしてしまうのは問題になるので気をつけよう。あくまで誠実な態度で査定や買取を依頼するのが重要なのである。
まとめ
プロの鑑定家が集まっているなんでも鑑定団であっても茶碗の鑑定でミスをしてしまった可能性が否定できない。科学技術を使った分析にも批判の声が上がっている状況があり、骨董品の真贋を見極めるのは難しいことがわかるだろう。骨董品を売るときには理解しておかなければならない点を踏まえて、多くの人に見てもらって適正な価格で売れるようにしよう。