「物を安く仕入れて、高く売る」という基本的なビジネスモデルは、今も昔も変わらない。自分で起業し、実際に物販の仕事をしてみると、仕入れの大変さを痛感することになる。基本的には大ロットでたくさん購入しなければ、安く仕入れられない。しかし、多く仕入れるとなると、それだけたくさん売りさばかなければいけないため、それなりの規模が求められる。つまり、投資額が大きくなり、その分、起業リスクも大きくなると言える。
このような事情もあって、個人や小規模業者では、中古買取業者を除いて、なかなか物販業を生業とすることが難しくなっている。中古買取業者の仕入れルートは実に多く、Twitterや買取比較サイト、古物市場やBtoB専用の通販サイトなどを使った仕入れも可能だ。また、仕入れは基本的に業者を相手にするわけではないため、大ロットで仕入れる必要もなく、仕入値(買取額)の交渉も融通が利き、販売相場よりも安く仕入れることができる。つまり1つの商品を仕入れて売るという行為で利益が出る。店舗を作る必要もない。
また、中古買取業は事業リスクが相対的に低い割に、粗利は高く、参入ハードルも低いとされ、とりわけ個人事業主や小規模な事業を考えている起業家に人気の業態だ。個人で出張買取や宅配買取を営む人も近年の副業ブームで増加している。ここでは、中古買取業に興味がある方に向けて、その業務に必要な「古物商」の許可についての条件や手続きの流れを紹介しよう。
本記事のポイント
- 業としておこなうなら古物商許可は必須
- 古物商はなぜ許可証なのか?
- 申請手順と代行業者を利用する場合について
CONTENTS
このコラムには、合法的な広告・宣伝が含まれている可能性があります。また、当社のサービスである「ヒカカク!」と「magi」の紹介も含まれています。
中古買取業者になるには「古物商」の許可を得なければならない
まず、古物営業法第3条では、次のように規定している。
第三条 前条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
引用:(古物営業法第3条)
つまり、中古買取業者は、ハードルの低い業種ではあるものの、公安委員会(警察署が窓口)から古物商の許可を得なければならないと、法律で明確に定められている。
では、なぜそんな面倒なことが必要なのか疑問に思うかもしれないが、これにはしっかりとした理由がある。このような目的や理由を探るには、規制法の総則を見ると手がかりがつかめる。古物営業法第1条には、規制等を行い、窃盗やその他の犯罪の防止・被害の迅速な回復に資することを目的とすると記されているように、盗品が売買されることを防ぎ、売買されたときに円滑に調査し、被害を最小限に抑えられるようにするため、許可制を採っていることがわかる。届出先が役所ではなく、警察署であるのも、目的を遂行するためだろう。
このように書くと大事に感じるかもしれないが、実際には、古物商の許可を得るのはさほど難しくない。煩雑な書類さえしっかりと揃えておけば、すんなり古物商の許可はおりるものだ。
第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
引用:(古物営業法第1条)
フリーマーケットやネットオークションでも古物商の許可は必要?
いまや中古品を売買する手段はとても多い。フリーマーケットやネットオークションなどで中古品を売買した経験がある人も少なくないのではないか。しかし、そういった人たちが全て古物商の許可が必要かというと、決してそういうわけではない。
古物商の許可が必要なのは、あくまで営業レベルで古物を扱って売買をする場合であり、上記の古物営業法第3条にもしっかりと定められている。つまり、古物商の許可が必要かどうかの判断は「営業性」「反復性」または「売買規模」に基づくため、フリーマーケットやネットオークションならどうかということではない。商いであれば、フリーマーケットだろうがネットオークションだろうが、古物商の許可が必要になるのだ。
古物商許可の申請手順
さて、中古品の買取業務を始めると、古物商の許可が必要になるため、ここでは一般的な申請手順と方法について簡単に説明しておこう。なお、詳細は都道府県ごとに異なることがあるため、届け出る前に警察庁のウェブサイトなどでも確認しておこう。
条件を満たしているか確認しよう
まずは、自分が古物商の許可を取得するための条件を満たしているか、確認しよう。特に、下記内容に該当する場合は、許可を得ることができないので、注意が必要だ。
欠格事由
- 1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 2. 禁錮以上の刑、又は特定の犯罪により罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 3. 暴力団やその関係者、暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為をおこなう恐れがある者
- 4. 住所が定まらない者
- 5. 古物営業の許可を取り消されるか、(相当の理由を除き)廃業して許可証を返納し5年を経過しない者
- 6. 心身の故障により業務が実施できない者
- 7. 営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者(相続人であり法定代理人が欠格事由に該当しない場合を除く)
- 8. 営業所ごとに管理者を選任すると認められない相当な理由がある者
- 9. 役員が1〜6までに該当する者があるもの
書類を用意しよう
諸条件を満たしていたら、今度は書類を用意しよう。書類の書式は決まっているものがほとんどだ。警察署のウェブサイトからダウンロードするか、直接警察署に取りに行こう。書き方や手続きは複雑なため、不明な点が多いようであれば、警察署に取りに行って、ついでに相談するのがベターだ。通常は「古物商許可申請書」、「誓約書」、「略歴書」を貰うことになる。
この他に、役所から証明書を発行してもらう必要がある。役所では「住民票」と破産者ではないことを証明する「身分証明書」をもらう。以前には、法務局では禁治産者(被後見人)、準禁治産者(被保佐人)でない証明で、「登記されていないことの証明書」を求められたが法改正で不要になった。法人の場合は「登記事項証明書」を取得する。さらに、法人の場合は定款(コピーで可)が必要であり、状況によっては賃貸借契約書のコピーや、URLを届け出る場合はプロバイダー資料のコピーなども提出しなければならない。自己所有でない家やURLの場合、「使用承諾書」も必要になるが、こちらはフォーマットがなく必要事項を記載すればいいことになっている。もし、申請者が本人ではない場合は、委任状も必要なので忘れないように気をつけよう。
なお、申請者と営業所の管理者が異なる場合、管理者の書類も必要になるため、注意しよう。古物商の許可をスムーズに取得するには、これら資料を適切に用意することがポイントになってくる。
警察署に申請しに行こう
あとは、書類と手数料19,000円を持って警察署に申請に行くだけだ。なお、このとき書類に不備があると困るため、必ず訂正できるよう印鑑をもっていくようにしよう。スムーズにいけば1~2か月ほどで「古物許可証」が手に入る。あとは、「古物商許可プレート」を受け取るか、自分で用意し(地域によって異なる)、手続きは完了だ。
古物商の申請は代行して貰うと楽に
上記のような書類手続きは慣れないものであり、自分でやる方法以外に行政書士に書類作成と申請を依頼してしまう方法がある。その方が簡単に古物商を取得でき、書類審査に落ちるリスクも低いためおすすめである。だだし、依頼する場合の相場は5万円ほどと安くはない。