フリマアプリ界を牽引する存在のメルカリ。2021年には月間利用者数が2000万人を超え、ひときわ存在感を放つフリマアプリサービスだ。個人で欲しい物を購入したり、不要な品を売却したりするだけでなく、古物商としてメルカリ販売をしている利用者も少なくない。古物商の義務のひとつには、古物台帳への取引の記入がある。
これは古物商にかせられた記載義務である。しかし、メルカリ販売でもこの記載義務は履行しなければいけないのだろうか。
本記事のポイント
- メルカリ販売はどんな条件で古物台帳の記載義務が生じる?
- 古物台帳の記載方法や本人確認について
- 古物商人がメルカリShopを使う際の注意点
CONTENTS
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業としてメルカリ売却・販売をするなら古物商は必要
まず、メルカリを利用するために古物商の許可が必須というわけではない。通常なら、古物商がなくてもメルカリは利用できる。
そのため、古物商なしでメルカリを利用している一般ユーザーは、古物台帳への記入も当然不要といえる。ただし、業としてメルカリを利用するなら古物商が必須である。メルカリで古物の仕入れをおこなわず、販売・売却のみをする場合でも業としておこなうのなら、古物商の許可を得る必要があるということである。そして古物商を得てメルカリで販売をするなら、基本的に古物台帳への記入も義務付けられている。
メルカリで業とみなされる条件
古物商の許可を得る必要があり、古物台帳記入の義務を負う際の条件をみていこう。業としてメルカリ販売をしているつもりはなくても、業とみなされてしまうケースもある。そして、知らなかったでは済まないこともある。だからこそメルカリで業とみなされる条件を知っておくことが大切だ。
営利目的での販売
営利目的でメルカリを介して販売をした場合、業である。営利目的とは、利益を出すことを目的とした行為のこと。
であれば、メルカリの出品物は、すべて値段が決められているため、不要品といっても、無料ではない段階でメルカリ販売=営利目的になるのではないか? と疑問を持つ人もいるだろう。実は購入時に利益を出す目的で仕入れているかどうか、が営利目的の判断ポイントになる。つまり、はじめからメルカリで販売し、利益を出すために購入したものを出品すると営利目的になるのである。例え利益が出たとしても、自分が使うために購入した物をメルカリで販売するだけでは、業とはならない。
反復継続性がある
反復継続してメルカリで販売をおこなう場合、業とみなされる可能性が高くなるだろう。反復継続性とは、簡単にいうと繰り返し物事がおこなわれること。
だが、どれくらいの期間、どれくらいの間隔でメルカリに品物を出品していると反復継続性があるとみなされるのか、明確な数字はない。そこが判断の難しいところだ。不要品ではありえないほど、常識を超えた不自然な頻度で出品が繰り返されている場合、業とみなされやすいだろう。
また、注意をしたいのが反復継続の意思があるだけでも、業と見なされてしまうこと。実際には1~2回しかメルカリで販売していなくとも、反復継続の意思がある場合、業でありビジネスということだ。
同じ商品・ジャンルの品を大量に出品
例えば、同じ中古パソコンを何台も販売している・スマホ関連の商品に特化して大量出品をしていると、業であると判断されてしまう。使用目的で購入した品の出品という範疇をあきらかに超えているからだ。業としてメルカリを利用しているからこその出品の仕方である。
メルカリのマイページ出品物をチェックすれば、その不自然さに多くの人が気付くだろう。まずこのようなケースでは、コレクションと説明できるような特殊な例を除いて、出品者がなんと言おうと社会通年上は業とみなされるため注意したい。
古物台帳の基本的なルール
上記の条件に触れ、業としてメルカリで古物を販売するなら、古物台帳へ記入が必要な取引もある。古物台帳への書き方、そして保存期間、違反した際の罰則などを見ていこう。
古物台帳への書き方
古物台帳への記載項目は、受入れ・払出しのふたつにわかれている。受入れは仕入れ、払出しは販売だ。受入れ・払出しともに共通する記載事項は、取引の年月日・区分・代価・相手の情報を記入する必要がある。この区分とは取引の種類のこと。
メルカリ販売で古物台帳へ記入するなら、区分の項目は売却 である。代価は販売金額を記入する。取引相手の情報は、メルカリ運営ではなく、実際に取引をした個人の情報を記入しなければならない。ちなみに販売(売却)の場合、払出し欄に本人確認の方法を記入する必要はない。詳しくは下記コラムを参照してほしい。
メルカリ販売で記入が必要な取引と不要な取引
業としてメルカリ販売をする場合でも、すべてにおいて古物台帳への記入が必要なのではない。メルカリ販売で記入が必要となる取引は、美術品・時計宝飾類・自動車・自動二輪車及び原動機付き自転車の品目に分類され、販売価格が1万円をこえるもの。または、販売の総額が 1万円未満であっても部品をのぞくバイク・原動機付き自転車である。逆にいうと、上記にあてはまらないなら、メルカリで業として古物販売をしても古物台帳への記入はいらないということだ。
保存期間
古物台帳は、一定期間は保存しておく必要がある。記入した日から3年の間は、営業所に備え付け保管しておかなければいけない。3年間は紛失したり、破損をしないよう気を付ける必要がある。
違反をした場合
古物台帳へ書いてない、また営業所に3年間保管していないなど違反をした場合は、法律で定められた罰則を受ける。6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金、またはその両方が古物台帳への記入や保管をしなかった場合の罰則である。無許可営業より、いくらか罰則は軽いが、最悪懲役となるため軽視してはいけないだろう。
古物台帳を用意する方法
一般の人にとって古物台帳は「どうやって用意するのか?」「どこで買うのか?」などわからないものだろう。古物台帳は都道府県にある防犯協会から購入可能だ。また、PR用品を扱っているお店やネットショップでも買える。価格は1冊1,500円前後で、まとめ買いで安く購入できる。防犯協会の場合、1,000円ほど高い。
しかし、記載事項を守っていれば、古物台帳は購入せずにエクセルで自作も可能だ。Googleアカウントを持っているなら、無料で使えるスプレッドシートを利用するのもいいだろう。また、自作が面倒なら無料で提供されているテンプレートをダウンロードする手もある。古物台帳への記入をより手軽にしたアプリもリリースされている。様式さえ適切であれば、購入・自作・ダウンロード・アプリどれでも構わない。
メルカリの匿名配送は注意が必要
メルカリでは利用者にとって使い勝手のよいサービスを続々とリリースしている。そのひとつが匿名配送である。多くの人が利用するフリマアプリでは、取引相手に個人情報を知られたくないというケースが多い。個人情報の流出や悪用を考えると、見知らぬ人に本名や住所を知られたくないと思うのは当然の心理だろう。
匿名配送は、購入者・出品者ともに個人情報を明かさずに取引ができるシステムである。メルカリ利用者の多くは、この匿名配送を利用している。しかし、古物商にとってこの匿名配送というサービスは必ずしもメリットではない。というのも、このサービスにより本人確認が一層困難となっているからだ。
本人確認が現実的ではない
メルカリでの取引は、対面取引ではなくネットを介した非対面による取引である。古物営業法では、非対面でも本人確認は必要であり、その方法も決められている。メルカリなどの非対面による取引の本人確認方法は、以下の通りだ。
- ・電子署名をおこなったメールの送信を受ける
- ・印鑑登録証明書と登録した印鑑を押印した書面の交付を受ける
- ・相手に 本人限定受取郵便等を送付して、その到達を確かめる
- ・本人限定受取郵便等により古物の代金を送付する契約 を結ぶ
- ・住民票の写し等の送付を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめる
- ・当該相手方の本人確認書類に組み込まれた ICチップの情報の送信を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめる
- ・当該相手方の本人確認書類の画像情報の送信を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめる
- ・相手方から本人確認書類または住民票の写し等のうち異なる2種類の書類の写しの送付を受ける、または本人確認書類1種類のコピーと補完書類1種類の送付を受け、記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付し、到達を確かめる
- ・相手から住民票の写し等の送付を受け、記載された本人の名義の預貯金口座に古物の代金を入金する
- ・相手から本人確認書類のコピー等の送付を受け、記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付し、到達を確かめるとともにコピー等に記載された本人名義の預貯金口座に代金を入金する
- ・古物商が提供するソフトウェアを使用し、相手方の容貌及び写真付身分証明書等の送信を受ける
- ・古物商が提供するソフトウェアを使用し、相手方の容貌の画像を送信させるとともに、ICチップが組み込まれた写真付き身分証明書のチップ情報の送信を受ける
- ・地方公共団体が発行した電子証明書と電子署名がおこなわれた当該相手方の住所、氏名、職業並びに年齢についての電磁的記録の提供を受ける
- ・公的個人認定法で電子署名の認証業務をおこなうとして認定を受けた署名検証者が発行した電子証明書と電子署名がおこなわれた当該相手方の住所、氏名、職業並びに年齢についての電磁的記録の提供を受ける
- ・上記の方法で本人確認をした相手との2回目以降の取引では、IDとパスワードの送信を受けること等により、真偽を確認するための措置を既に取っていることを確かめる
これらの非対面取引での本人確認方法は、どれもメルカリでは向いているとはいえない。メルカリでの支払い方法は、トラブルや詐欺対策のために一旦メルカリが預かる形である。利用者間で直接の金銭の取引は発生しない。上記の方法で本人確認をするには、取引相手に直接交渉をするしかない。しかし、現実的に考えても匿名配送を希望する相手が個人情報の送付に同意するわけがないだろう。
運営が確認しているから本人確認が不要とはならない
それでも、メルカリを利用している古物商は少なくない。彼らの言い分としては、メルカリに登録する際、運営側がユーザーの本人確認をしているためユーザー同士では確認不要ということだ。
確かにある意味で重複確認と言える。それでも現行の法律では、ユーザー間でも本人確認が必要であることが、警視庁のサイトにも明確に示されている。
まとめ
メルカリで販売をする場合、利益を出す目的で購入した古物を出品するなら業とみなされ、古物商が必要だ。そして古物営業法に基づき、古物台帳への記入も必要となる。品目と販売額により記入が必要なケースと不要なケースがあるため、ルールはしっかり押さえておきたい。また、自分では業として販売している意識がなくても、反復継続性があるなど業とみなされるケースもあるため、注意しなければいけない。
古物台帳は、防犯協会の他、ネットショップなどでも買える。購入以外でもエクセルやスプレッドシートを用いた自作、テンプレートやアプリのダウンロードでも問題ない。しかし、現実問題として今日の古物営業法で定められた非対面による本人確認方法はメルカリでは現実的ではない。匿名性の高いサービスを展開していることからも、困難さがうかがえる。それでも、台帳義務がある条件下で本人確認をおこなわず、古物台帳への記入もしないと古物商として法律に触れてしまう。